最近、この本を読みました。
Home Server と Small Business Server は Home and Small Business Server 略してHSBSと呼ばれており、HSBS開発チームがその開発を担当しています。
HSBSチームが手がけているColorado 3兄弟(Vail、Aurora、Breckenridge)はまもなくRTMと言われていますが、その中のAurora=Small Business Server 2011 Essentials はマイクロソフト初のオンプレミスとクラウドのハイブリッドサーバー製品となる予定です。
マイクロソフトのようなソフトウェア開発会社が、クラウド上でBPOSやOffice 365のようなSaaSを展開するのはなぜだろうと漠然と思いながらも今までは、「Google Appsとかへの対抗だよね」くらいのイメージでした。そうでないと基本的には投資回収がどんどん後ろにずれるクラウドサービスを、マイクロソフト自らが手がける経済合理性に乏しいからです。また、それが理由で、業績がよくなかったらいずれ撤退するだろうなとも思っていました。
本書を読んで、マイクロソフトの狙いがいくつか書いてあったのですが、本当の目的はロングテール市場へのアプローチのためだという認識を初めて持ちました。マイクロソフトは既存のオンプレミスがクラウドに移行するよりも、遙かに大きい新たな収益効果を今までなかなか到達できなかったSMB(Small and Medium Business)市場に求めているということです。
そう考えると、マージナル効果がゼロに近いソフトウェア製品を伝統的なオンプレミス市場で回収し、さらなる収益をロングテール市場から薄く広く集めていき、しかも継続的取引関係を構築出来るというのは確かに合理的な戦略です。
そういう戦略があるからこそ、マイクロソフトがクラウドに進出し、しかも自社の持てる見えざる資産を生かしながらクラウド上で優位にビジネスを展開し勝ち組となる可能性が高く、またロングテール市場へのアプローチ効果からクラウドからの撤退もそうそうないだろうということが読めてきます。
本書はマイクロソフトの他にも、富士通等いくつかの会社の事例を取り上げ、企業にとってクラウドを活用して下位レイヤを外注し、自社にとってより重要なアプリケーションレイヤへのリソース集中と見える化を促進することの重要性などを説いています。
ITに少しでも携わるビジネスマンには一読をお勧めします。