「Windows Server 2012 R2 記憶域スペースのアーキテクチャと設計・管理のベストプラクティス」という題でホワイトペーパーを執筆させて頂きました(その他のWindows Server 2012 に関するホワイトペーパー一覧はこちら)。内容としては、記憶域スペースのアーキテクチャ、仕組みといった基礎的な内容を解説しつつ、構築手順、設定方法などを解説しています。サーバー製品のホワイトペーパーですのでコンシューマー向けのドキュメントではありませんが、記載されている内容は Windows 8、8.1クライアントOSでの記憶域スペースでもほぼ同じように当てはまる内容ですので、記憶域スペースについて情報が足りないと感じていらっしゃった方は読んでみて頂ければ幸いです。
私も記憶域スペースについて情報がないと嘆いていた1人だったのですが、そう思っていた矢先にマイクロソフトさんから「ホワイトペーパーを書いてみませんか?」というお話を頂きました。「テクニカルライターでもない自分に書けるのか?」と不安を覚えつつ無謀にも挑戦してみて、完成した今も出来映えについて手応えというか自信が持てない状態です。
Windows Home Server のMVPとして、WHS V1のドライブエクステンダー、そして幻となったドライブエクステンダー V2 を追いかけてきた延長で、記憶域スペースもウォッチしてきましたが、趣味が高じてこのようなお話を頂けるようになるとは思っていませんでした。このドキュメントがどなたかの参考になることがあればいいなと願っています。
クラスターの記憶域スペース
クラスターの記憶域では、共有SASアレイを自宅に設置して、実機でクラスター環境を構築しました。記憶域スペースで使えるSASのホストバスアダプター(HBA)やJBODエンクロージャーについて情報がない中、環境構築には苦労しましたので、今回の環境を参考までに記載しておきます。
構成図
サーバー
サーバーマシンについては今日日何でも構わないと思いますが、今回はHP MicroServer Gen 8を2台利用しています。クラスター構成ではハードウェア構成が全く(あるいはほぼ)同一であることが基本となりますので、同じ機種を2台購入しました。ActiveDirectoryのドメインコントローラーはクラスターノードに追加出来ないため、これとは別に1台あります。
ホストバスアダプター
LSIロジックのLSI 9200-8e SGL と LSI 9207-8e SGLを利用しています。それぞれ使用されているチップは SAS2008 と SAS 2308 で異なりますが、問題ありませんでした。記憶域スペースではRAID機能を完全に無効にできる必要があるため、MegaRAID製品のうちJBODをサポートしない機種は使えないと考えてもらったほうがよいかと思います。
JBODエンクロージャー
LSIロジックの630Jを用いました。2010年3月発表の製品で、SES は2.0までしか対応していない製品ですが、LEDの制御含めて今回検証した範囲では問題なさそうでした。実際にフェールオーバークラスタリング環境で導入されるにはやはり記憶域スペースでWindows サーバーカタログの認定を取得した製品をお勧めします。今はDataOnやRAID Inc、富士通などの一部製品に限られていますが、近いうちに増えると聞いています。
記憶域スペースは安価なハードウェアで高可用性を手に入れられる
記憶域スペースが目指しているのは、一般的に入手可能な安価なハードウェアを利用しながら、高可用性を実現する記憶域の提供です。エンタープライズの記憶域としてはSANが主流となっている今日ですが、今となってはネットワークがボトルネックとなっていたり、高価なハードウェアが必要となるなどして、HA-DASが見直されつつあるのが現状かと思います。
Affordable High Availability (HA) Delivers Convenience, Value and Improved Response Time to Retail Branches(PDF)より抜粋
記憶域スペースはサーバーに直接接続されたストレージ(DAS)、しかもSASやSATAなど安いメディアを利用して、従来のエンタープライズレベルの高可用性を備えた記憶域を実現するテクノロジーです。今回のホワイトペーパーが、記憶域スペースに対する理解を促進し、中小規模の企業などでも高可用性を備えたサーバー環境の実現に少しでも役立てたら幸いです。